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「「の」の字を、ゆっくりと。」
ひらがな「の」の練習
国語のノートのマス目の中に、鉛筆でぐるりと丸を描く。丸すぎてもいけない、角ばってもいけない。あの微妙な曲線の加減が、六歳の手首にはひどく難しかった。先生が赤ペンで直してくれた跡の上を、何度もなぞる。花丸をもらった日の、胸の中に灯った小さな火。ひらがな五十音のなかでなぜか「の」だけが、書く練習をした記憶としてくっきり残っている人は少なくない。文字を覚えることが、世界を広げることだと気づく前のあの集中の時間。
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