Index No.
「これ全部に名前を書くの?」
算数セット
入学前夜、テーブルに広げられた赤いケース。おはじき・数え棒・ブロック・時計の模型——ひとつひとつがカラフルで、まだ何に使うかもわからないのに、全部愛おしかった。母親が細い油性ペンでシールに名前を書き、小さな部品に一枚ずつ貼っていくあの作業は、親子どちらにとっても入学前夜の儀式だった。授業で初めておはじきを並べて「5と3で8」と確かめた瞬間の、手のひらの上で数字が形になるあの感覚。算数セットは計算を教えてくれる前に、「学ぶ」ことには道具と手触りがあるということを、小さな体に伝えていた。
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