Index No.
「10円握って、いらっしゃい。」
駄菓子屋
引き戸を開けると、独特の甘酸っぱい匂いが迎えた。ガラスケースの中のくじ、並んだうまい棒、よっちゃんイカの袋、ビッグカツ、モロッコヨーグル、酢だこさん太郎。10円を手に入れるだけで王様になれた場所が、確かにあった。おばあちゃんがレジ代わりの台に肘をついて、子どもの選び直しに付き合ってくれた。学校帰りに縁側にランドセルを投げ出して、友達と肩を並べながら何を買うか本気で悩んだあの時間。値段と欲望と駆け引きを、駄菓子屋で最初に覚えた気がする。
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