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「牛乳じゃんけん、勝ったことある?」
牛乳瓶
ガラスの重さ、唇に当たる瓶の縁の冷たさ。給食の牛乳瓶は、飲み物というよりひとつの儀式だった。銀色のホイルキャップをきれいに剥がせると、なんとなく今日はいい日な気がした。冬の牛乳は冷蔵庫よりも冷たく、夏はぬるくて表面に薄い膜が張る。それでも飲み干した後の瓶の底に残る、かすかな甘い匂いは妙に好きだった。飲めない子の分を懸けた「牛乳じゃんけん」の緊張感、先割れスプーンで瓶をコンコン叩く音、返却口に瓶を戻す時のガラス同士がぶつかる涼しい音。給食が終わると教室に漂うあの独特の空気——牛乳と米飯と、誰かの上着の匂いが混ざったやつ。
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