Index No.
「先生に見つかる前に次の席へ。」
手紙回し
四つ折りにした紙は、指先だけで素早く隣の机へ滑らせる。チョークの音が止まった瞬間を見計らって、息を殺しながら。「好きな人、誰?」「放課後コンビニ集合ね」——短い言葉だけど、そこには確かに体温があった。返事が来るまでの時間が、今思えば一番ドキドキした瞬間だったかもしれない。途中で意地悪な子に握りつぶされたり、先生に見つかって朗読されたり。失敗の記憶の方が鮮明なのに、それでもまた折って渡した。スマートフォンで何百件もメッセージを送れる今より、あの一枚の紙切れの方が、ずっと重かった気がするのはなぜだろう。
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