Index No.
「ジーコロコロ、あの重いダイヤル」
黒電話
指をかけて回すと、ダイヤルがゆっくり戻ってくるまで次の番号を回せない。急いでいるときのあの焦れったさ。黒電話の受話器は重く、耳に当てるとひんやりした。電話番号は全部頭の中か、傍らのメモ帳に書いてあった。呼び出し音が鳴ると家族の誰かが廊下まで走り、「はい、○○でございます」と背筋を伸ばした。壁際の台の上か、廊下の隅に鎮座した黒い筐体は、家族全員の共有物だった。プッシュ式に替わった日、あのダイヤルの重さと引き換えに何かが変わった気がした。その「何か」が何だったか、うまく言葉にできないまま今日まで来た人もいるだろう。
まだ録音はありません。