Index No.
「仁丹一粒、さわやかに」
仁丹
祖父のスーツの胸ポケット、あるいは仏壇の引き出し。どこからともなく現れる小さな銀色の缶の蓋を開けると、ツンとしたあの香りが部屋に広がった。森下仁丹が明治38年から売り続ける口中清涼剤、仁丹。薬でもなく、お菓子でもない、大人の世界のものとして子どもにはやや謎めいた存在だった。口に入れた瞬間のスーッとした清涼感と、じんわり広がる独特の風味。ハッカとも違う、ガムとも違う、あの不思議な味は一度覚えたら忘れられない。おじいちゃんから一粒もらったとき、ほんの少しだけ大人に近づいた気がしなかったか。
まだ録音はありません。