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「今度の日曜、ドライブに行こう。」
マイカー
「マイカー」という横文字が、夢の匂いをまとっていた時代がある。カローラの新車が家に来た日、父親がボンネットを何度も拭いた。クラウン、ブルーバード、パブリカ——日曜の朝、バケツと雑巾を持って家族で洗車した。ワックスを塗り込む父の背中と、ホースの水しぶきと、眩しかった昭和の午前中。高速道路がまだ珍しくて、サービスエリアに寄ることじたいが旅だった。後部座席で膝を抱えて眠った帰り道、窓の外に流れる夜の街灯。マイカーは家族の時間をまるごと変えた、小さな箱だった。
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