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「落ちそうで、落ちない。でも、いつか落ちる。」
線香花火
紙の先に火をつけると、じわりと赤い玉が生まれる。しばらくすると金色の火花が放射状に広がり、次第に細く、儚くなって——最後はポトリと地面に落ちる。線香花火の持ち時間はほんの数十秒で、誰かと競えば必ず先に散る誰かがいた。縁側の向こうから虫の声、蚊取り線香の白い煙、浴衣の袖を気にしながら息を止めた夏の夜。あの火の玉が宙に浮いている間だけ、時間が止まったように感じた。日本の夏がすべて詰まったあの数十秒を、誰と一緒に過ごしていたか、ふと思い出すことがある。
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