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「ファンタ!ファンタ!ファンタがある!」
ファンタ
駄菓子屋の古い冷蔵庫の扉を開けると、水滴をまとったグレープ色のボトルが並んでいた。コインを握りしめて選ぶ一本は、オレンジかグレープか——それだけの選択が、夏の午後の一大事だった。ファンタのビビッドな色は「大人の飲み物」コーラへの通過儀礼のような存在で、甘くて人工的なぶどうの香りが鼻を抜ける瞬間こそが、あの頃の炭酸飲料の醍醐味だった。瓶を傾けて飲み干し、ガラスの底に残る最後の一滴まで追いかけた夏休み。あの紫色の甘さを、舌がまだ覚えているだろうか。
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