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「口の中でほろりと消えた甘さ。」
落雁
仏壇の前に並んだ白や薄紅の小さな塊。菊の花、鯛、松の形に押し固められた落雁は、供えるためのものだと知りながら、こっそり一つ口に入れたくなった。噛まなくても溶けていく、あの淡い甘さと粉っぽさ。おばあちゃんの家の畳の匂いと、線香の煙と、夏の法事の蒸し暑さが、どこかセットになって記憶に刻まれている。茶席で出てきた一片を崩すのがもったいなくて、しばらく眺めていたこともある。華やかでも派手でもない、でも確かにそこにあった上品な甘さ。
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