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「あの赤い色、忘れられない。」
梅ジャム
透明な小袋の中で、ぐにゃりと光る赤いかたまり。駄菓子屋のガラスケースの端っこに、いつもひっそり並んでいた梅ジャム。薄焼きせんべいにへらでぺたりと塗って、口に入れた瞬間の、甘くて酸っぱくて、どこか人工的なあの味。「おいしい」というより「やみつき」という言葉の方が似合っていた。あれが東京のたった一人の職人の手で作られ続けていたと知ったのは、ずいぶん大人になってからのことだ。2017年、その職人が引退したとき、梅ジャムはひっそりと姿を消した。もう一度だけ、あの赤いへらで塗りたい——そう思う人が、きっとあなたの隣にもいる。
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