Index No.
「ティルト。」
ピンボール
コインを入れると、台全体がぶるりと震えた。銀色のボールがスプリングに弾かれて飛び出し、バンパーに当たるたびにベルが鳴って数字が跳ね上がる。ゲームセンターの薄暗い隅に並んだピンボール台は、電子ゲームが来る前の王様だった。フリッパーを叩くタイミング、台を「ちょうどいいくらい」に揺らす技術、そして揺らしすぎた瞬間に点滅する「TILT」の赤い文字——あの絶望感は格別だった。スコアを刻む機械音、タバコと熱気が混ざった空気、隣の台に群がるギャラリーの視線。液晶画面には絶対に出せない、鉄とガラスの手触りがそこにあった。
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