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「ウルフ、また勝った」
千代の富士
58キロ台の体で、はるかに重い相手を叩きのめす。千代の富士貢の取組が始まると、家族がテレビの前に集まった。鋼のように盛り上がった肩の筋肉、まわしを掴んだ瞬間の静止、そして電光石火の上手投げ——NHKの実況が「決まったぁ!」と叫ぶ前に、もう土俵の外に飛んでいた。北海道福島町から上京した少年が「ウルフ」と呼ばれる大横綱になるまで、53連勝という記録がそれを雄弁に語る。優勝31回、1045勝。1989年、国民栄誉賞の贈呈式で見せた笑顔と、2016年の訃報の重さ——どちらも、同じ一人の力士の話だとは信じたくなかった。
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