Index No.
「10円玉ひとつで、十分だった。」
チロルチョコ
駄菓子屋のガラスケースの前で、10円玉を指でくるくる回しながら悩む時間があった。チロルチョコを選ぶか、もう一枚別のものにするか——あの逡巡こそが、最高の贅沢だったかもしれない。コーヒーヌガーのじんわりした苦みと甘さ、ミルクのやさしい口どけ、きなこもちのもちっとした食感。小さな四角いひとかけらの中に、これだけの世界が詰まっていた。剥がしたパッケージを集めて並べた子も、まとめ買いして友達に配った子も、きっとどこかに笑顔の記憶がある。
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